退職金の受取りは、一括現金と年金での受け取りの2つの方法があります。
双方にそれぞれメリットとデメリットがあり、迷うことが多いところです。
この選択に際しては、税金(所得税・住民税)、健康保険料、介護保険料を含めて考えることが大事です。
ここでは、最初に一括受取と年金受取のメリットとデメリットについて見てみましょう。
一括受取のメリット
・自分のお金を直接管理することで安心と自覚ができる。
・所得税や健康保険料・介護保険料・医療費負担で有利になることが多い。
・資産運用の選択肢が増える(金融資産運用、不動産運用など)。
一括受取のデメリット
・20年~30年間の確実な運用管理(取崩しのテクニック)が必要になる。
・無計画な取崩し・支出のために資金不足に陥る。
・年金運用時に得られる運用利益がない。
年金受取のデメリット
・公的年金と合算所得になり、所得税・健康保険料・介護保険料負担が多くなる。
・80歳までの定期年金が殆んどであり、年金終了後(80歳以降)の生活費の減少に
備える必要がある。
このように、メリットとデメリットが双方にありますので、公的年金の受給方法(繰り下げ、繰り上げ)と合わせて、一括受取と年金受取の比率を考えて決めることが大事でしょう。(一部を一括受取と年金受取に分割できるのかの確認が大事です)
次に、リタイア後の生活に大いに影響のある、税金や健康保険料などについて事例を挙げて見てみましょう。
退職金の一括受取と年金受取を比較する事例
このような事例は、団塊世代以降に多く見られます。
一括現金で受取りの場合の退職所得の税金を最初に計算してみましょう。
この事例の退職金はゼロになります。
退職所得控除額 800万円 +(38-20)×70万円=2060万円
退職所得 2000万円-2060万円=△60万円 → ゼロ 非課税
年金受取りの場合はどうなるのでしょうか。
20年間での受取総額 2320万円 (116万円×20年) 利息分 320万円
年金受取りのメリットは、2ヶ月に1回定期的に受け取ることができ、毎月の家計の収支上は現役のサリーマン時代と同じで便利です。
それが、年金受取りを選択する最大の理由ですが、本当にそれでいいのでしょうか。
年金の運用利息と税金・健康保険・介護保険料を含めた比較(60歳~80歳)
60-64歳は再雇用で年間240万円の収入として計算、健康保険料はその間は本人負担50%を計上、 65歳以後は国民健康保険料を計上。
△320万円は、年金の元金に加算される利息分ですが、税・保険料負担を減らす要素ですのでマイナス表示しています。
〇税・保険料の比較
年金受取り時の20年間の税・保険料 760万円
一括受取り時の 〃 〃 500万円
差額(一括受取の方が負担が減る) 260万円
一括受取資金の運用を考慮に入れておりませんので、2%程度の運用ができれば、さらに
一括運用が有利と言えるのではないでしょうか。
今回は、全額一括受け取りと年金という選択でしたが、実際は一括受取と年金受取を30%~70%にする配分が多いと思われます。
年金期間が終身か定期か
上記の例は、比較的多くありそうな事例を挙げてみましたが、退職金額、配偶者の有無、期間中の利率、年金以外の収入状況などによって、数値はさまざまに変わります。運用利回り1.5~2.5%程度では一括受取が有利のようです。
しかし、年金の期間が終身か定期かによって、大きく変わることになります。
近年は80歳前で終了の定期年金が多くなっていますが、終身年金の場合は、税・保険料負担が多くなっても、年金受取りが有利になるでしょう。
個別シミュレーションの仕方
年金受取り時の運用利息は、正式の計算式での算出は面倒ですが、
総受取額 ― 年金預入=運用利息分ですから、計算可能です。
年金の受取額は、2ヶ月毎または年間単位で必ず支給開始時に示めされますので、その額を元にして総受取が計算できます。
事例の場合は 2,000万円を運用利息1.5%で20年間受取りですから、
年間受取額約116万円×20=2,320万円ですから320万円になります。
健康保険料や介護保険料は少し専門的であるのと、住んでいる自治体によって相当の差がありますので、市役所等の窓口などで確認するか、ファイナンシャルプランナー等に相談をするのも方法です。
まとめ
退職金の一括受取と年金受取の事例を見ながら解説をしてきました。
この事例では、定期年金の場合は、一括受取が有利となりましたが、退職金額・年金の運用利率、60歳以降の就労の状況、家族状況など、個人毎に条件は違いますので、個別のシミュレーションが大切です。
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